■第3回:コードネームは<おかこん>

 カーコンポが自分の部屋に帰ってきたという製品コンセプト。
だから「お帰り、コンポ・・・」と、話しかけてみたくなる。

『では、コードネームは<おかこん>で。』

 社内では冗談半分からこう呼ぶことになり、LE801の開発が
始まった。同時に、このコードネームは、カーオーディオを
<カーコンポ>と呼んだ世代がターゲットユーザーであることも
意味した。

 ケースだけで売り物になるのか?そんな疑問もあった。
 価格はどうなる?デザインを優先すれば安くは作れないはずだ。
 ターゲットユーザーは?音楽プレーヤーといえば携帯型が全盛の
 時代に、このような据置型は受け入れてもらえるのか?

 未知数は多いが、このような製品が世の中に存在しないこと自体が、
製品化を決定させた。わが社が作らなければ誰も作ってはくれない
だろう。
 クルマに乗せられずに廃棄されてしまうカーオーディオを
無駄にしてはならないという、そんな使命感も製品化を後押しした。

■スピーカーターミナル
上:採用した陸式金メッキターミナル
下:試作初号機のワンタッチ式スピーカ端子

■追加したアンテナ接続端子

■試案:シンプルな構造のケースイメージ

■デザインコンセプトは「簡素な豪華」

 「やや照明を落とした穏やかな雰囲気の中で、
    昔日のドライブを思い出しながら音楽を聴く。」

 製品のコンセプトは決まっていた。お気に入りのカーオーディオに
込められた多くの<思い>を鮮やかに引き出すための環境を
提供することだ。
 そこで、カーオーディオが中心的存在となるよう、まずは
シンプルな構造を意識して外観をデザインしてみた。
しかし、それでは組み込んだカーオーディオがとても安っぽい物に
見えてしまったのである。いくらカーオーディオが目立っていても、
全体の品位が低下してしまっては製品のコンセプトが保てない。

 もちろん、コストも重要なファクターであって、非常識な
価格であれば製品として成立しない。デザイン性、製造コスト、
組み込み作業の容易さなど、いくつもの設計案が検討された。

 最終的には色調とケースサイドの仕上げを重視することで
品位を維持し、電源スイッチだけを置いたシンプルな
パネルによって、どんなカーオーディオにも違和感を生じさせない
デザインとした。

 背面に設置したスピーカーターミナルには、頑丈な陸式金メッキ
ターミナルを採用した。試作初号機ではワンタッチ式の接続容易な
スピーカー端子としていたが、永く使っていただく製品には
ふさわしくない、とする意見が採用された。結果的にはこの
スピーカーターミナルも製品の性格を決定づける重要なアイテムと
なっていた。
 同様に、内部配線に用いる接続端子にも金メッキ品を使った。
このことで、端子を接続する際の挿入力が減少し、お客様に
行っていただく組み込み作業の容易化にもつながった。

 また、開発当初は「ラジオは使えない」ようにしてなっていた。
室内でカーオーディオのラジオを聞くためにはアンテナが
必要であり、クルマに付いているようなロッドアンテナを
室内に立てることはないと判断し、ラジオ機能はオミットされていた
のである。
 しかし、昔のドライブを思いおこすと、当時はラジオの使用頻度が
非常に高かった。「あの頃は・・・」という思い出を製品コンセプトに
取り込もうとすると、ラジオの受信ができないことは致命的な
欠点とも思えた。
 そこで、背面に屋外アンテナを接続できる端子が追加された。
これによって、FM放送においては、クルマでの受信状態と比較に
ならないほど良好な感度を得ることができた。


株式会社 電匠
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